精神障害者保健福祉手帳(以下、精神障害者手帳)は、一定の精神障害があることを公的に認定するものです。精神障害者の自立と社会参加の促進を目的に、さまざまな支援やサービスが受けられます。
この記事では、申請を検討している方に向けて、申請の流れ・メリット・注意点を4ステップでわかりやすく解説します。
手帳を持つことに抵抗がある方へ
「手帳を持つことで不利益があるのでは…」と不安に思う方もいるかもしれません。
結論から言うと、障害者手帳を持つことで不利益が生じることはほぼありません。また、病状が軽快した場合は返還や更新しない選択も可能です。
むしろ、手帳を取得することで、医療費の軽減・税金の控除・就職支援など多くの支援制度が受けられます。ぜひこの記事を参考に、前向きに検討してみてください。
対象者は?
以下のような精神障害により、長期にわたり日常生活や社会生活に制約がある方が対象です。
- 統合失調症
- うつ病・双極性障害(そううつ病)などの気分障害
- 発達障害(自閉スペクトラム症、ADHD、学習障害など)
- 高次脳機能障害
- てんかん
- 薬物・アルコール依存症
- ストレス関連障害(PTSDなど)
注意
- 知的障害のみの方は対象外ですが、知的障害と精神障害の両方がある場合は、療育手帳と精神障害者手帳の両方を取得できます。
- 手帳の申請には、精神障害に関する初診日から6ヶ月以上経過している必要があります。
精神障害者手帳の等級
等級は1級~3級に分かれており、障害の重さに応じて判定されます。
等級 | 状態の目安 |
---|---|
1級 | 日常生活を送るのが非常に困難 |
2級 | 日常生活に著しい制約がある |
3級 | 日常生活または社会生活に支障がある |
精神障害者手帳を持つメリット
全国共通のサービス
- NHK受信料の減免
- 所得税・住民税・相続税などの控除
- 自動車税・自動車取得税の軽減(1級のみ)
- 失業保険の受給期間延長
- 障害者雇用としてのカウント・職場適応訓練
- 生活福祉資金の貸付制度
※「自立支援医療(精神通院医療)」は手帳の有無に関係なく利用できます。
地域や企業によって受けられることがあるサービス
- 電車・バス・タクシーの運賃割引(自治体により異なる)
- 携帯電話料金の割引(docomo・au・SoftBank等)
- 公共施設や映画館、美術館などの割引
- 公営住宅への優先入居
- 地域独自の医療費助成制度
- 通所支援・就労支援・福祉手当など
精神障害者手帳を活用した就職支援
手帳を持っていると、就職活動で「障害者雇用枠」に応募できます。
障害者雇用枠では以下のような配慮が期待されます:
- 業務内容や勤務時間の調整
- 通院や治療への理解と柔軟な対応
- 精神的・身体的な負担を考慮した環境
自分に合った職場を選べる選択肢が広がるため、就労が難しいと感じている方にもおすすめです。
申請方法と流れ(4ステップ)
申請前に確認すること
- 精神障害の初診日から6ヶ月以上経過していること
- 主治医と相談し、診断書をもらう必要があります
必要書類
- 申請書(市区町村で入手)
- 診断書(指定の様式/障害年金の証書でも可)
- 顔写真(縦4cm × 横3cm)
- マイナンバー確認書類(個人番号カード、通知カード+本人確認書類)
※代理申請の場合:
- 委任状など代理権確認書類
- 代理人の本人確認書類(免許証など)
手続きの4ステップ
① 診断書用紙を役所で受け取る
(市区町村の障害福祉窓口)
② 主治医に記入してもらう
※「初診から6ヶ月以上経過した後」に作成
③ 申請書・診断書・写真・マイナンバーを提出
④ 審査後、等級が決定し交付される
※交付まで 1~4ヶ月程度。7ヶ月以上かかることもあります。
有効期限と更新
手帳の有効期間は、交付から2年後の月末までです。
更新するには:
- 診断書または障害年金証書のコピー
- 顔写真(縦4cm × 横3cm)
- 印鑑
- 現在の手帳
更新は有効期限の3ヶ月前から可能なので、診断書の準備も含め早めの行動が安心です。
障害状態が変化した場合(重くなった・軽くなったなど)、等級変更申請も可能です。
まとめ|日常生活の安定と安心のために
精神障害者手帳を持つことで、医療費・税金・交通・就職など、生活のさまざまな場面で支援が受けられます。
手帳の取得には時間がかかりますが、一歩踏み出すことで選択肢が広がるのも事実です。
気になる方は、まずはお住まいの自治体の福祉窓口に相談してみましょう。最近は、自治体のホームページで診断書様式がダウンロード可能なところも増えています。